発達障害を持つ人が絵を描くことが好きで、それを仕事にしたいと考えている方は多くいます。その中でもイラストレーターは発達障害のある人に適した職業の一つと言えるでしょう。
本ブログでは、発達障害のある人がイラストレーターとして活躍する際の課題と対策、支援制度などについて詳しく解説していきます。
発達障害のある人にイラストレーターが向いている理由
イラストレーターという職業は、発達障害のある人の特性を活かせる面が多くあります。以下の理由から、発達障害のある人はイラストレーターに適していると言えます。
細かい作業が得意
発達障害のある人は細かい作業が得意です。イラストレーターの仕事では、細かいペン入れや微細な線の描写が求められるため、発達障害のある人の特性を発揮しやすい環境にあります。
また、長時間集中して作業を続けられる点も強みになります。発達障害のある人は、一つのことに熱中できるタイプが多く見られます。
イラストを描くために長時間没頭する様子は、むしろ発達障害の特性から来る能力が発揮されている状態と言えるでしょう。
独創的な発想力
発達障害のある人は独創的な発想力に富んでいることが多いです。特にASD(自閉症スペクトラム症)の人は、常にユニークな視点を持っていると言われています。
イラストレーターには独自の表現力が求められるため、発達障害のある人の創造性が活かせる職業と言えます。
発達障害のある人は型にはまった発想ではなく、斬新なアイデアを生み出しやすい傾向があります。そのため、オリジナリティ溢れるイラストを描くことができるのです。
自分のペースで作業ができる
発達障害のある人は、一般的な社会生活のリズムになじめない場合があります。そのため、自分のペースで作業できるフリーランスのイラストレーターに適しているのです。
自身のタイミングで仕事を進められるため、ストレスを抑えられます。
発達障害のある人は、周りとのコミュニケーションで疲れてしまうことがあります。自分のペースでイラストを描ける環境は、メンタルヘルスの維持にも適しているのです。
イラストレーターとしての課題と対策
一方で、イラストレーターとして働く上で発達障害のある人が抱える課題もあります。これらの課題を克服するための対策についても解説します。
コミュニケーション能力
発達障害のある人は対人コミュニケーションが苦手な場合があります。
しかし、イラストレーターとして仕事を受注する際には、クライアントとのやり取りが欠かせません。言葉の受け止め方を誤ったり、自身の伝え方が雑になったりするリスクがあります。
この課題を解決するには、コミュニケーション練習を積むことが重要です。就労移行支援サービスなどでロールプレイングを行い、対応力を高めましょう。
また、質問事項をメモして確実に伝えるなど、補助ツールの活用も有効です。
時間管理能力
発達障害のある人は時間を意識することが苦手な傾向があります。イラストを描く際に画期に夢中になりすぎて、締切日を守れなくなる可能性があります。スケジュール管理が課題となるでしょう。
この課題を解決するには、スケジュール帳やアプリを活用して期日を意識することが大切です。
作業工程を細かく分けて、段階的に進捗を確認する習慣をつけるのもよいでしょう。周囲の人にも管理を手伝ってもらうとさらに効果的です。
技術の維持
イラストレーターは最新のデジタルツールを使いこなす必要があります。発達障害のある人は、新しい知識やスキルの習得が苦手であるケースが多いことが課題となります。
この課題に対しては、スキルアップを意識的に行うことが重要です。定期的に勉強会やセミナーに参加し、業界の動向を把握する習慣をつけましょう。
最新のテクニックやツールを学ぶことで、イラストレーター業界で通用するスキルを維持できます。
支援制度を活用する
発達障害のある人がイラストレーターとして働く際に、様々な支援制度が役立ちます。主な支援制度について紹介します。
就労移行支援事業
就労移行支援事業は、発達障害のある人が一般企業に就職するための訓練プログラムを提供しています。
イラストレーターを目指す場合、ビジネスマナーやコミュニケーション力、パソコンスキルなどを身につけることができます。就職後のフォローアップも受けられます。
就労移行支援事業では、イラストレーターに必要なスキルを計画的に学ぶことができます。
例えば、イラストレーションの描き方や編集ソフトの使用方法、ポートフォリオ作成など、実践的な指導が期待できます。
障害者総合支援法
障害者総合支援法に基づく助成制度を利用できます。具体的には、障害者就業・生活支援センターによる就職支援サービスや、障害者向け授産施設での就労の機会があります。また、福祉サービスも受けられます。
発達障害のあるイラストレーターの場合、授産施設での作品制作やデザインの仕事を請け負うことで収入を得られる可能性があります。
障害者手帳を取得することで、授産施設での仕事や支援策を受けられるようになります。
NPO法人等の支援
障害者アートに特化したNPO法人などの支援を受けることができます。販路の開拓や作品展示・販売会の開催、デザイナーへの仲介などを行っている団体があります。
例えば、発達障害のある人のイラストを使った雑貨開発や広告デザインの制作に取り組む団体もあります。作品の販売収益の一部がイラストレーター個人に還元されるケースもあり、創作活動の継続に役立ちます。
就労モデルケース
様々な支援制度を利用しながら、イラストレーター業に就いた発達障害のある人の事例を紹介します。
就労移行支援でポートフォリオ制作
ある男性の場合、就労移行支援事業所でポートフォリオ制作に取り組みました。紙媒体とウェブ媒体の両方でポートフォリオを作成し、企業の募集に応募しました。
求人検索エージェントの支援を受け、自身の能力を理解してもらえるところを選んで就職活動を行いました。
結果として、商業施設の広告デザインを担当する企業に採用されました。入社後は職場の理解を得ながら徐々に仕事を覚え、イラストレーターとしてキャリアを積んでいます。
副業としてイラストレーター業に従事
発達障害のある人がイラストレーターを本業とするのが難しい場合、副業としての選択肢もあります。表ケース企業に正社員として勤める傍ら、個人でイラスト制作の仕事を受注する形です。
主な収入源は会社員の給与となるため、安定収入を確保できます。時間に余裕ができたときにイラスト制作をして、追加の収入源を得られるというメリットがあります。
作品作りのペースは自由に決められるので、発達障害のある人にとってストレスが少ないのも利点です。
総括:発達障害者がイラストレーターとして活躍する方法
発達障害のある人がイラストレーターとして活躍するために大切なことは、自身の特性を理解し、それを活かせる環境を整備することです。
支援制度を積極的に活用し、障害特性に合わせて働き方を工夫することで、イラストレーター業に就くことができます。
長所である創造性や細かい作業への強みを存分に発揮できるのがイラストレーターの魅力です。
一方で、コミュニケーションや時間管理など障害特性に起因する課題にも目を向ける必要があります。適切な助言や訓練を受けながら克服していく姿勢が何よりも大切なのです。
発達障害のある人一人ひとりに合った進路選択を行い、社会参加につなげていくことが重要です。
障害があっても、イラストレーターという創作活動を通じて、個性を発揮し自己実現する喜びを感じられるはずです。